以下の情報は、IHAの患者向け情報を翻訳して掲載したものです。監修:東京慈恵会医科大学皮膚科教授 新村眞人先生

単純ヘルペスと妊娠


あなたが赤ちゃんの誕生を心待ちにしている出産を控えた親であるならば、おそらく生まれてくる赤ちゃんが健康であるようにさまざまな対策を講じているところでしょう。多くの専門家が勧める対策の一つは、あなたが単純ヘルペスウイルス(HSV)について十分な情報を得ることです。よく見られるこのウイルス感染症の症状は、大人ではふつう軽いのですが、小児では、まれですが重い症状を引き起こすこともあります。

単純ヘルペスウイルスとはどのようなものですか?

HSVは、顔面や口唇(顔面ヘルペス、たとえば「口唇ヘルペス」)、または性器(性器ヘルペス)に、かゆみや痛みを引き起こします。HSV-1は主に顔面ヘルペスを引き起こし、HSV-2は主に性器ヘルペスを引き起こします。しかしどちらの型のHSVでもいずれの部位にも感染することがあります。そしてどちらの型も新生児に感染することがあります。

単純ヘルペスウイルス患者はどのぐらいいるのですか?

HSV-2に感染している人の数は、国によっても、属している集団によっても大きく異なります。HSV-2感染の罹患率は世界中でさまざまです。アメリカではこのウイルスに感染している人が成人の25%前後であるのに対し、ヨーロッパやオーストラリアでは414%前後です。多くの国(たとえば、イギリス、スコットランド、アメリカ、オランダ、日本など)で、HSV-1感染による性器ヘルペスの比率が高いか、または増加しつつあります。

HSVに感染しているパートナーとあなたが性的接触をもった場合、あるいはHSVに感染しているパートナーがあなたとオーラルセックスを行った場合、あなたは性器ヘルペスにかかる可能性があります。HSVをもつ大部分の人は、自分が感染していることを知りません。というのは、症状がまったくないか、気付かないほど軽いからです。

単純ヘルペスウイルスはどのようにして赤ちゃんにうつりますか?

ヘルペスは赤ちゃんにどのような害をおよぼしますか?

HSVは新生児ヘルペスを引き起こすことがあります。これはまれな病気ではありますが生命を脅かす状態となることがあります。新生児ヘルペスは、皮膚や眼や口腔の感染症、中枢神経系や内臓への障害、精神遅滞、あるいは死に至ることもあります。薬物治療は早期に行えば、後遺症を防いだり軽減したりするのに役立ちます。

新生児ヘルペスにかかる赤ちゃんはどのぐらいいるのですか?

大人の性器ヘルペス感染者は多く見られますが、特に母親が妊娠29週までに性器ヘルペスにかかっている場合は新生児ヘルペスのリスクは低く、アメリカでは、死産でない新生児1,800〜5,000人に1人、英国では60,000人に1人、オーストラリアやフランスでは10,000人に1人、オランダでは35,000人に1人が新生児ヘルペスにかかります。これらの数字は、性器ヘルペスをもつ女性の大多数が健康な赤ちゃんを産んでいることを意味しています。

新生児ヘルペスのリスクが高いのはどのような赤ちゃんですか?

母親が妊娠30週から40週の間に性器ヘルペスにはじめてかかった場合、その赤ちゃんが新生児ヘルペスにかかるリスクは最も高くなります。これは、初感染した母親がウイルスに対する抗体をまだ十分に作っていないので、出産前と分娩時の赤ちゃんの免疫による防御が全くできないからです。また、新しく感染した性器ヘルペスはウイルスをたくさん排泄していることが多いので、分娩時に産道にウイルスが存在するからです。

性器ヘルペスの病歴をもつ妊婦は大丈夫ですか?

妊娠前に性器ヘルペスにかかったことがある女性が赤ちゃんにHSVをうつすリスクは、非常に低くなります。これは、彼女の免疫系がすでに抗体を作っていて、これが胎盤を通じて赤ちゃんの血液中に移行するためです。たとえ分娩時に産道にたくさんのHSVが存在しても、抗体が赤ちゃんを保護してくれるでしょう。また、母親が性器ヘルペスを持っていることがわかっている場合、医師が赤ちゃんを守る対策を講じることができます。

赤ちゃんをHSVから守る:母親が性器ヘルペスをもつ場合

もしもあなたが妊娠中で、性器ヘルペスをもっているならば、あなたは赤ちゃんにうつるかもしれないと心配していることでしょう。あなたが妊娠前からヘルペスをもっていたなら特に、新生児ヘルペスのリスクは極めて小さいので安心してください。以下の対策を講じることによりそのリスクはさらに軽減されるでしょう。

赤ちゃんをHSVから守る:母親が性器ヘルペスをもたない場合

妊娠の最後の10週間に母親が性器ヘルペスに感染した場合、赤ちゃんが新生児ヘルペスにかかるリスクは最も大きなものとなります。

これはまれにしか起こりませんが、現実に起こることもあり、赤ちゃんにとって深刻で生命を脅かすほどの状態を引き起こします。赤ちゃんを守ることのできる最善の方法は、HSVについての事実とあなた自身をHSVから守る方法を知ることです。その第一段階は、あなたがこのウイルスの免疫を持っているかどうかを調べることでしょう。もしもあなたのパートナーが、性器ヘルペスの免疫を持っていることがわかっていて、自分は免疫があるかどうかがわからない場合には、医師に相談する必要があります。

性器ヘルペスはどのように検査するのですか?

あなたが性器の症状に気付いた場合に、最もよく行われる検査法はウイルス培養です。これは、症状が出た部位からHSVを検出する検査です。この検査を行うには、ヘルペスの症状がはっきりしている時、できれば発症の一日目に、症状が出ている部位から医師がサンプルを採取しなければなりません。検査結果は7日間ぐらいでわかります。

あなたが症状を感じていない場合には、血液検査によりHSV-2に感染しているかどうかがわかります。HSV-2は通常性器に感染するHSVです。(血液検査でHSV-1への感染の有無もわかりますが、多くの場合これはただ単に口唇ヘルペスをもつかもたないかを意味するだけです。)

最も正確な血液検査はウエスタンブロットという方法ですが、これは主に研究用の方法です。イムノブロットアッセイやPOCKit™検査のようなその他の検査法も広く利用されています。これらの検査法のうちいくつかはHSV-2感染しか同定できませんが、その他にはHSV-1とHSV-2の両方とも検出できる検査法と、両方とも検出できるがどちらか特定することのできない検査法があります。

−日本では、単純ヘルペス1型、2型を特定できる検査法は今のところ使用することが出来ません。−

性器ヘルペスに確実に感染しないようにするにはどうしたらいいですか?

もしもあなたが性器ヘルペス検査で陰性であれば、以下の対策が妊娠中の感染からあなたを守るでしょう。

−日本では、発症抑制療法に対しては健康保険が使えません。−

妊娠後期に性器ヘルペスにかかったらどうしたらいいですか?

もしもあなたが性器の症状を感じたら、または性器ヘルペスにかかったと思ったら、この時期の赤ちゃんへの感染は最もリスクの高いものですから、すぐにかかりつけの産科医や助産婦に申し出ること。しかし、ヘルペスは数年間休眠していることもあります。初感染と思っても、実は初めて症状が起こった古い感染である場合があります。血液検査を受けると、あなたの症状が古い感染の結果であるか、あるいは最近初感染した性器ヘルペスであるのかがわかります。赤ちゃんを守る最善の方法について主治医と相談してください。妊娠の最後の10週の間に性器ヘルペスにかかった場合、抗ウイルス薬を処方する医師もいます。またそのような状況下では、たとえ症状が出ていなくても、帝王切開を勧める医師もいるでしょう。

出生後の赤ちゃんをどのように守ることができますか?

出生後に新生児ヘルペスにかかる可能性があるのは、最初の数週間です。この時期の感染は必ずと言っていいほど、口唇ヘルペスをもつ大人のキスにより引き起こされます。赤ちゃんを守るため、口唇ヘルペスができている時には赤ちゃんにキスをしないこと。他の人々にもそのことを頼んでください。もしもあなたに口唇ヘルペスができているならば、赤ちゃんに触れる前には手を良く洗うこと。

妊娠した女性のパートナーのために

もしもあなたのパートナーが妊娠したら、そして彼女が性器ヘルペスに感染していないならば、あなたは確実に赤ちゃんを感染から守ることができます。あなたが性器ヘルペスをもつかどうかを調べること(「性器ヘルペスはどのように検査するのですか?」を参照)。通常の性行動を行う成人の約20%が性器ヘルペスに感染しており、その大部分が無症状であることを覚えておいてください。もしもあなたがウイルスをもつことがわかったら、以下のガイドラインにしたがって妊娠中のパートナーを守ること。

赤ちゃんを新生児ヘルペスから守る最善の方法は、妊娠後期の性器ヘルペスを予防することです。


英文から日本文への翻訳は、グラクソ・スミスクライン株式会社(マーケティング本部ヘルペス・皮膚科領域部:電話03-5786-5047)が担当したものです。