以下の情報は、IHAの患者向け情報を翻訳して掲載したものです。監修:東京慈恵会医科大学皮膚科教授 新村眞人先生

性器ヘルペス:パートナーにとってどのような意味をもつのか?

あなたのパートナーは性器ヘルペスにかかっています。彼または彼女がこの病気に対処するのを助ける上であなたのサポートは非常に大切となるでしょう。またこの病気はあなたにうつることがあります。あなたのパートナーが医師を再び訪れる時には、あなたも一緒に行くと良いでしょう。そうすればあなたはこの感染症についてより多くの情報を得ることができるでしょう。ところで、あなたが抱くと思われるいくつかの質問に対する答えがここにあります。

性器ヘルペスとは何ですか?

性器ヘルペスとは、一般に性的接触によりうつる、一般的な感染症です。これはヘルペスウイルス科に属する2つのウイルスのうち、1つにより引き起こされます。ヘルペスウイルス科には水ぼうそうや帯状疱疹を引き起こすウイルス、伝染性単核症という病気を引き起こすウイルスも含まれています。

ふつう、性器ヘルペスは2型単純ヘルペスウイルス(HSV-2)に感染することにより引き起こされます。そしていくつかの国々では、このウイルスに感染している人が5人に1人いるということが研究により示されています。性器ヘルペスはHSV-1によっても引き起こされますが、このウイルスはふつう、唇やその周辺にできる口唇ヘルペスを含む顔面ヘルペスを引き起こすことが多いのです。

性器ヘルペスは、多くの人々において時おり再発し、痛みをともなう症状があらわれますが、現在これらの症状を治療する有効な方法が存在します。一般にこの病気は生命を脅かすものではなく、全身の健康に対する長期間の影響はありません。

性的に活発な人は誰でも性器ヘルペスにかかるリスクがあります。それは性別、人種、社会的階級には関係ありません。

私のパートナーはどのようにして性器ヘルペスにかかったのでしょうか?

性器ヘルペスは、通常は性行為の際に感染した水ぶくれやびらんに直接接触することによってうつります。症状が存在しないときにもうつることがあります。HSV-2はふつう、膣または肛門セックスでうつります。HSV-1はふつう、オーラルセックスによりうつります(口から性器への接触)。あなたのパートナーが性器ヘルペスをもつと診断されたばかりであっても、これは必ずしも彼または彼女が不誠実であったとか、過去に性的に乱れていたとかいうことを意味するものではありません。

あなたのパートナーはあなたから性器ヘルペスをうつされたのかもしれません。あなたがそれに気付いていなくても、あなたがウイルスを運んでいる可能性があります。なぜなら、HSV-2に感染している80%の人々が感染の徴候を何も示さないからです。だから、あなたがパートナーに知らず知らずのうちにこの感染症をうつすことはとても簡単なことなのです。

この感染症の症状は、人によって大きく異なります。たとえばあなたの場合、全く気付かないものであっても、あなたのパートナーの場合には重症の水ぶくれを引き起こすかもしれないのです。

性器ヘルペスは膣のセックス同様、オーラルセックスによってもうつることがあるので、あなたの口や顔面の口唇ヘルペスから彼または彼女にウイルスがうつることも可能です。たとえ接触した時にあなたに口唇ヘルペスの症状が出ていなくても、あなたがウイルスをうつすことが可能であることを覚えておいてください。

また、あなたのパートナーがおそらく数年前に過去の性的パートナーに由来するウイルスに感染していたことも考えられます。このウイルスは不活性(潜伏状態)のまま長期間体内にとどまることがあり、今回初めて症状を引き起こしたという可能性もあります。

性器ヘルペスは私達の関係にどのような影響を及ぼすのですか?

性器ヘルペスに誤って付随している汚名のために、パートナーはこの感染症にかかっていることをあなたに打ち明けるのに、おそらく非常な勇気を必要としたでしょう。あなたに打ち明けるということは、すなわちパートナーがあなたを気遣っていて、もしもあなたが感染していないなら、パートナーがあなたのことを感染から守りたいと思っているということなのです。

性器ヘルペスについて話し合うことによりもたらされる誠実さと信頼が、あなた方の関係に力を与えあなた方の距離をより近いものにすることがわかるでしょう。さらに、あなたのサポートと理解は、あなたのパートナーが性器ヘルペスについて感じている多くの不安を打ち負かすのに役立ちます。もしもあなたがこの感染症のさまざまな面についてよくわからない場合は、彼または彼女にもう一度説明してくれるよう頼んだり、もっと詳しい情報を得られるよう医師に頼んだりしてください。

もしもあなたが性器ヘルペスをもつ誰かと性的関係にあることが受け入れられないと感じるのであれば、自分自身に問いかけてみてください。既に疑問を抱いている関係を終わらせるための言い訳としてそれを使っているだけではないかと。

症状はどのようなものですか?

あなたのパートナーに性器ヘルペスが初めて発症している場合には、彼または彼女は全身的に具合が悪く、発熱、頭痛、全身の関節と筋肉の痛み、そして性器の過敏症を感じていると思われます。これは性器に赤くなった部分が現れている間とその後の数日間続くでしょう。これらの赤くなった部分は痛みをともなう水ぶくれになるでしょう。その後この水ぶくれは破れて、痛みをともなうびらんが残り、その後徐々に治癒し、ふつう跡は残りません。

この最初の発症の程度は人によっていろいろですが、治療しないと3週間も続く重症の人もいます。これらの症状は治療によって素早く回復します。医師はおそらくあなたのパートナーに対して1クールの抗ウイルス療法をほどこすでしょう。これは有効な薬物療法で、性器ヘルペスを治すことはできなくても発症時の症状の回復を早めたり症状の程度を軽減したりすることはできます。痛みを緩和するためにその他の対策を実行することもできます。

しかし、性器ヘルペスをもつ多くの人々にとって、この感染症の肉体的な意味よりも、性器ヘルペスが引き起こす感情的な意味のほうがはるかに重いのです。性器ヘルペスについては、性の乱れにより起こるという考えのような多くの誤解があり、またこれらの誤解は感染者に悪い評判を与えます。あなたのパートナーはそのために怒りを感じたり、診断にショックを受けたりすることがあるでしょう。彼または彼女は、あなたやこの感染症をうつされたかもしれない過去のパートナーにだまされたように感じるかもしれません。不安、罪の意識、自己主張の喪失、そして拒絶されるのではという恐怖はよく見られる感情です。あなたのパートナーがこれらの感情に対処し、性器ヘルペスが彼または彼女の人生に及ぼす影響を最小限にすることを助けるために、あなたのサポートが非常に重要となります。

症状は再び起こりますか?

性器ヘルペスの症状は再び現れることがあります。これは、いったんウイルスに感染すると永久的に体内にとどまるからです。大部分の期間はウイルスは不活性のままですが、時に再活性化されることがあり、新たな発症を引き起こします。

再発には個人差があり、二度と再発を起こさない人もいます。その他の人々では1年間に数回再発するようです。しかし、再発はふつう最初の発症よりも期間が短く症状も軽く済みます。何か特定の出来事や状況が再発の引き金となることがあります。そしてあなたはパートナーがこの引き金となる要因、たとえば仕事や家庭でのストレス、疲労、健康状態不良、睡眠不足、セックスによる摩擦、また女性の場合は月経といったような要因を避けるか軽くすることを手助けすることができるでしょう。

もしもあなたのパートナーの性器ヘルペスが、頻繁であったり重症である場合、また再発があなたのパートナーにとって大きな不安である場合、彼または彼女は発症抑制療法の恩恵を受けることも可能です。発症抑制療法は、再発を予防したり、再発の頻度を軽減したりします。

私がこの感染症にかかるかもしれない可能性を軽減するために私達は何ができるでしょうか?

もしもあなたが必要な予防策を講じているなら、あなたのパートナーからウイルスがうつる可能性は小さいものです。性器ヘルペスは必ずしもセックスを自制することや、セックスの楽しみを減らすことを意味していません。もしもあなたがコンドームを使用したら、ウイルスがうつるリスクを軽減することができるでしょう。長期間の関係でコンドームを継続的に使用するということはそのカップルの二人で決めることの出来る個人的な決定です。大部分の人々にとって、パートナーとの関係におけるHSV感染症の重要性を全体的に見ると、それがコンドームを使用する唯一の理由だとすれば、そのようなコンドームの使用はそれほど有意義なことではなくなります。しかし、ヘルペスの症状がはっきりと出ている間は、ウイルスが最もうつりやすいので、カップルはセックスを避けるよう努めなくてはなりません。この期間は、あなたのパートナーが、性器のひりひり感や灼熱感のような発症の警告徴候に最初に気付いてから、びらんが治癒するまでの間です。また、性行為は症状の治癒を遅らせます。

潤滑性が不十分であることから起こる小さな擦り傷などがあると、感染のリスクは増します。セックスの時だけ潤滑剤を利用すること、また擦り傷ができている時にはセックスを避けることが有益となるでしょう。性器への潤滑剤使用は、セックスの開始時に特に有益です。

お尻やもものような性器以外の領域のびらんは、性器領域と同様に接触感染性であるので、セックスの最中にびらんに直接的に触れないよう注意しなければなりません。

また、たとえあなたのパートナーが性器ヘルペスの徴候を示していなくても、この感染症がうつるリスクは小さいけれども依然としてあります。もしもあなたかパートナーが口唇ヘルペスをもっていたら、オーラルセックスは避けるのが得策です。というのはこれはウイルスを性器に拡げることがあるからです。

タオルやお風呂のお湯を共有することにより、あるいはトイレのシートから、あなたに性器ヘルペスがうつることはありません。症状が出ている間でさえ、あなたが避ける必要があるのは、びらんができているあなたのパートナーの体の一部に皮膚と皮膚とで接触することだけです。抱擁も、ベッドの共有も、キスも大丈夫です。

私が性器ヘルペスにかかっているかどうかはどのようにして知ることができますか?

もしもあなたも性器ヘルペスにかかっていたなら、あなたはパートナーの症状と同様の症状を示すかもしれません。しかし、感染の徴候には大きな個人差があります。あなたが軽い症状しか示さないこともあり、性器ヘルペスであることを簡単には認められない可能性があります。症状には、性器領域のむずがゆさ、性器周囲の皮膚の小さな傷、あるいは性器領域、もも、お尻の皮膚の赤い斑点などがありますが、症状が全くない場合もあります。

もしもあなたが感染の徴候を示していると思ったら、医師の診察を受けてください。最近まで、診断は、症状がはっきりと出ている時の臨床症状とウイルスを検出するためのスワブテストによって行われるのみでした。しかし、HSV-1抗体とHSV-2抗体とを区別することのできる血液検査が利用できるようになりました。初感染後から抗体を生産するまでにかかる時間は通常812週間です。これらの検査で偽陽性と偽陰性が起こりうることを知っておくことも大切です。

血液検査はヘルペスを確定的に診断することはできません。血液検査はあなたがHSV-1および/またはHSV-2に感染しているかどうかをあなたに教えてくれるのみで、感染部位を特定することもできません。性器から採取したスワブの検査も必要とされます。というのはこの検査で陽性、すなわちウイルスが検出されれば、性器ヘルペスの診断が確証されるからです。性器ヘルペスの検査の意味を、性器ヘルペスを経験したことのある誰かと話し合うことを勧めます。

−日本では、単純ヘルペス1型、2型を特定できる検査法は今のところ使用することが出来ません。−

もっと詳しい情報やアドバイスはどこで受けられますか?

この情報を読み、あなたのパートナーと性器ヘルペスについて話し合った後に、あなたは具体的な質問や心配事を持つことでしょう。あなたのかかりつけ医やパートナーの主治医は、そのような質問に答えることができるか、あるいはアドバイスやサポートを与えることのできる他の専門家を紹介することができるでしょう。

性器ヘルペスに関するあなたの疑問が全て解消するまで、あなたの主治医の下へ何度でも通ってください。

場所によっては、地域の性器ヘルペス支援グループがあり、貴重な支援・情報源となります。あなたの住む地域にこのようなグループがあるかどうか主治医に尋ねてみましょう。

−日本では、公的な支援グループは現在のところありません。−

もしもあなたが、あなたができるヘルペスの治療についてもっと詳しい情報を望んでいる場合は、以下のようにしてください。

謝辞

この情報の提供は、ニュージーランドヘルペス基金(NZHF)との協力によって実現されたものです。

英文から日本文への翻訳は、グラクソ・スミスクライン株式会社(マーケティング本部ヘルペス・皮膚科領域部:電話03-5786-5047)が担当したものです。